2. 出来事

「僕が去年の暮れ、帰宅途中に事故にあったことは話したよね。」
「ええ、正面から走ってきた車に幅寄せをされたと、あなたから聞いたわ。」

細い通りで車同士がすれ違った際に、僕の歩いていた側に対向車が寄ってきたのだ。そして、僕は右側塀とその車の間に挟まり肩から背中にかけてダメージを受けた。

僕にぶつかった車はそのまま走り去ろうとしたが、交差点に差し掛かったところで止まらざるを得なかった。わりと車の往来がある交差点だったため、一旦停止せざるを得なかったのだ。

「それと奥様とのことに何かつながりがあるということなの」と朋子は僕に聞いた。そう感じていると答えた。

事故があったとき、それを目撃した人が、その車に駆け寄り助手席側の窓を叩き「逃げるな」と言ってくれた。そして、警察に通報してくれた。

身体のダメージは半年ほど経過した今現在、日常に差支えがない程度に回復した。運が良かったんのかもしれない。場合によっては、その事故により人生を失うことになる可能性さえあったのだから。

「事故のショックで僕は眠れなくなり、眠れたとしても夜中に目が覚め、そのまま朝まで眠ることができなくなった。」

眠れなくなると、僕にぶつかってきたドライバーの顔がありありと思い出される。彼は誤るどころか、言いがかりをつけるなと恫喝してきたのだ。

もちろん、目撃者がいたし人身事故扱いになったのだが、どうしても事故当時の恐怖が僕の意識を支配するようになってしまった。

 

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