連載

ディストピアの淵

4. マンション

実際のところ、僕の精神は自分自身で自覚できるほど安らかになってきていた。明るい気持ちになってきていると実感できるし、過去に経験したことの内容な幸福感に満たされることもしばしば感じる。「実際に脳が健康のなると、体もものすごく楽になっていうのが...
ディストピアの淵

3. セロトニン

「お医者様には診てもらったの?」「医者には去ることの出来ない、僕を脅迫する観念のおゆなものが毎晩襲ってくると説明した。」と僕は言った。僕は心療内科に通い、事故の状況や自分自身の様子をできるだけ詳しく医者に説明した。でも、説明しきれないかもし...
ディストピアの淵

2. 出来事

「僕が去年の暮れ、帰宅途中に事故にあったことは話したよね。」「ええ、正面から走ってきた車に幅寄せをされたと、あなたから聞いたわ。」細い通りで車同士がすれ違った際に、僕の歩いていた側に対向車が寄ってきたのだ。そして、僕は右側塀とその車の間に挟...
☆各物語 1話目

1. 久しく

「妻を抱いたんだ」と僕は言った。「へんな人」と朋子は言った。「もしかしたら7年ぶりかもしれないし、最後にしたのは11年前かもしれない。正確にそんなことを記録してもいないし、覚えてもいないし。」「でも、とにかくあなたは彼女を抱いたのね。」と朋...
☆各物語 1話目

1. 無方

上も下も、左も右もなく、浮いているわけでもなく、漂っているのでもなく、ただあるような感覚だ。何もかもが渾沌としていて、それは全体と自分の区別さえつかないような、更にいえば、感覚といった言葉でも表せない在り様だった。「ここはどこなのだろう」洋...
☆各物語 1話目

1-1.私のなかの無自覚

生活の中で何かを見聞きし、物事に触れるたびに、さまざまな思いが心をよぎります。いろいろな考えが頭の中をめぐります。そして、次の瞬間には、喜びや、怒り、恐れ、悲しみなどの感情も湧きあがります。また、笑ったり、飛び上がったり、逃げたり、泣いたり...