朋子はコーヒーをいれ、レタスときゅうりとハムのサンドイッチを朝食に作ってくれた。
僕はキッチンの小さなテーブルに朋子向かい合いサンドイッチを食べた。朋子が妙に幸せそうに見えた気がした。
そして夕べの銀盆の男のことを思い返してみた。
夢ではない。確かに僕は小さな公園から続く路地裏の小さな店に入った。飲みすぎたというほど飲んでもいなかったし、記憶を失うほど酔いたいわけでもなかったはずだ。
どうして僕はここにいるのだろう。
あの男はちゃんと存在していたし、僕はそこで眠りに落ちたのだ。そうだ、僕はあの店で眠ってしまったのだ。
「ねえ、本当のことを言ってくれないかな」と僕は言った。「君と一緒にレンストランバーで食事をしながらウォッカトニックを飲み、そのあと君の部屋まで送ってから、僕は待たせていたタクシーでひとりで帰った」
「そして、家に帰る前にもう少しひとりでいようと思いタクシーを降りたんだ」と、僕のなかの朋子との夕べの記憶を辿った。
「夢の中で寄り道をしたのね」と朋子は言った。「奥さんは大丈夫なの?朝帰りが確定してしまっているけれど」
「気にしなくてもいい。月に1~2度は仕事で徹夜をするし、そのことで妻から何か言われることはないから」と僕は言った。
「コーヒーはもう大丈夫?」と朋子が言った。朋子はお湯を沸かし、新しいコーヒーをいれてくれた。「今日はこれからどうするの?」
「とくに決めていない。君さえよければだけど、もう少しだけいてもいいかな」と僕は言った。
「どうぞ、あなたさえよければ。私は何も用事がないし」と朋子といった。
「それで、話の続きだけど、僕は最初から君と一緒にこの部屋にきたの。」
「そうよ、静かにウイスキーを飲んで私と寝たのよ。ほかに何があったというの?」
「君はコーヒーを飲んで、僕はウイスキーをロックで。」
「ダブルだかわからないけど、グラスに氷を入れて、なみなみとウイスキーをいれて、ソファーにもたれかかり。」
「氷が解けてしまっても気にせず飲んでいた。」
「うん、たぶんそんな感じだったかもしれない。私はあなたの隣に座り、なんとなくまったりしていた。」
「そして僕はソファーでうとうとした」
「私を左腕で引き寄せて、それから自然に私の中に入り、キスもなになくただ静かに私の中を圧迫するくらい固く膨らんで。」
「そして射精した?」と僕は聞いてみた。「とても熱いものが溢れ出てきたわ。」と朋子が言った。
「それがあまりに自然で、とても深い感じがした」と朋子は付け加えた。
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