ディストピアの淵 3. セロトニン 「お医者様には診てもらったの?」「医者には去ることの出来ない、僕を脅迫する観念のおゆなものが毎晩襲ってくると説明した。」と僕は言った。僕は心療内科に通い、事故の状況や自分自身の様子をできるだけ詳しく医者に説明した。でも、説明しきれないかもし... 2024.09.12 ディストピアの淵
ディストピアの淵 2. 出来事 「僕が去年の暮れ、帰宅途中に事故にあったことは話したよね。」「ええ、正面から走ってきた車に幅寄せをされたと、あなたから聞いたわ。」細い通りで車同士がすれ違った際に、僕の歩いていた側に対向車が寄ってきたのだ。そして、僕は右側塀とその車の間に挟... 2024.09.11 ディストピアの淵
☆各物語 1話目 1. 久しく 「妻を抱いたんだ」と僕は言った。「へんな人」と朋子は言った。「もしかしたら7年ぶりかもしれないし、最後にしたのは11年前かもしれない。正確にそんなことを記録してもいないし、覚えてもいないし。」「でも、とにかくあなたは彼女を抱いたのね。」と朋... 2024.09.10 ☆各物語 1話目ディストピアの淵
無方 32. 無方 「これで終わりなのか。」洋一は自らの死を予感した。まだ体の自由が幾分か残っているうちにと、洋一は2階にある自分の部屋から1階のリビングへ降りて行った。もし誰かが見ていたらきっとまともな状態でなかったに違いない。洋一自身もどうやったら、その時... 2024.09.09 無方
無方 31. 川の音 震災から2度目の春に、山川の山小屋に湯本がふと訪ねてきた。麓の駅まで来たてから、山川へ連絡が来た。「急で申し訳ないけど遊びに来たよ」と、電話口の向こうで湯本が大きめの声で話した。「おおー、湯本か。車か?」と山川が聞いた。「まだ雪残ってるし、... 2024.09.09 無方
無方 30. 自我 洋一は右のわき腹を抑えた。こみ上げてくる吐き気とどうにもならない倦怠感が彼を支配していた。手を当てた肋骨のいちばん下のあたりはどす黒くが腫れ上がっていた。そんな状態になっても医者へ行かず、薄暗い部屋でじっとしている。肝臓が固くなり、そこにつ... 2024.09.09 無方
無方 29. 自分 ホコリをかぶった机の上には笑っている絹江の写真が置かれていた。写真のふちはちぎれている箇所もあり、顔のあたりは手垢でくすんでいた。既にそこから抜け出す気力も失われていたが、それでもなお洋一の心を地震の時に見た業火が焼いていた。それでいて、体... 2024.09.09 無方
無方 28. ソレイユ 「洋一と連絡取ったか?最近」と純が直ヤンに聞いた。正月ということもあり、東京の復興もままならない中、湯本や純が仙台に帰省していたのであった。仙台の国分町という繁華街に地元の同級生が店を持っていた。女の子が何人かいる“ソレイユ”という名の店だ... 2024.09.09 無方
無方 27. 山小屋 山川は純との電話からそれほど日が経たない内に仙台に戻っていた。もともと、山川の育った桜ヶ丘の家は、年老いた母親が一人で暮らしていたので、娘2人と妻を連れ帰っても不自由なく暮らせる広さだった。実家は父親が元気だったころ花屋を営んでいた為、それ... 2024.09.09 無方
無方 26. 沼 正午過ぎに仙台南インターから高速を降り絹江の家のある286号線を東に進んだ。多少混雑してはいたが30分ほどで絹江の自宅付近へ到着した。「直ヤン、ありがとう。ここまですまなかった。」と洋一がいつも通り短めの挨拶をした。「行くのか、行って家族に... 2024.09.09 無方